2020年の3月以降、「自粛」とか「STAYHOME」というムードの中でSNSやオンライン通話で誰かと意図的に近況などを話す場を作ることはできますが、今までのように「あそこに行ったらたまたま会ってさ」みたいな偶然的な出会いが起きづらくなっちゃった。(そこが素晴らしいところなのに)
[ A.N.D.NOW ]では、日々モノを作ったり遊んだりしている人々に今どんな生活をしていて家で何を考え何を見ているのか。日本はどーなっていくと考えているか、少し話を聞いてみました。
芸能人やニュースキャスターや専門家じゃなくって少し距離の近い、みんなの2020年5月。
(6月になってしまった。時の流れが早くて遅い)
人間は慣れるしいとも簡単に忘れてしまう。これから先の不安定な、だけど必ず来る未来の為に。覚えておきたいことがたくさんあります。
A.N.D.NOW #14は外苑前にあるヘアサロン「らふる」の代表、中村拓郎。「末長く楽しめる髪をあなたに」をコンセプトに、シャンプーからタオル、染め液までもオーガニックのものを使用することにこだわり、居心地の良い空間を提供している。スタイリストも少人数で丁寧な接客、素晴らしい美容室だ。品質や空気感にこだわりを持ったお店を切り盛りする店主に、現在の状況とこれからのお話を聞いてみた。
Q
お名前と、肩書きなど教えてください。
中村拓郎
株式会社らふる 代表取締役
美容室らふる 店長
Q
新型コロナウィルスによって現在どんなふうに過ごしていますか?
またはステイホームでどのように過ごしていましたか?
神宮前(北参道)にて美容室らふるを経営しておりますが、COVID-19感染症に対する防止策を取りながら営業を続けています。(換気、消毒、席同士の距離を2m離す、マスク常時着用、営業時間短縮など)
8:00 起床。妻、娘、息子に挨拶。
9:15 通勤時間
9:45 いつものコーヒースタンドで一服。
10:30 店内清掃開始
11:00 開店
19:00閉店
19:30 退勤
20:00 帰宅 手洗いうがい消毒
~20:30 晩ご飯を食べながら子供達とコミニュケーションを図り、宿題チェック、その後子供たち就寝
20:30~残務処理、洗濯物を畳む、皿を洗うなどやるべき事をやる。
22:30 夫婦揃って流行っているらしいエクササイズ(YouTube)で運動不足解消
23:00 風呂
24:00 自由時間(ゲーム、映画鑑賞、坐禅のどれか)
1:45 就寝
Q
それはコロナ前とどう変化しましたか?
家族とのコミニュケーションの時間を少し多く増やすことができました。
事業を行っている以上、現状の厳しい状況をどうにか耐え凌ぎ、打開できないかと考えを巡らせ
、行動を起こし続ける必要はありますが、家に帰る時間は早まったのでこれはこれで良いかもしれません。
複利として、睡眠時間も増え、以前に比べ人間的な毎日を過ごすようになったと感じますし、
こういった社会の情勢の中でも多方面からの応援のお声をいただき感謝の気持ちと、他者を思いやす気持ち
がより一層芽生えたように思います。
ある日の晩ごはん。外食の機会がなくなり、料理する日が増えたので。
Q
ご自身の活動や生活は変わっていくと思いますか?
思います。
変えざるを得ない部分は変える必要がありますからね。
元々ワーカホリック的なところがあり、忙しさに生きがいを感じていました。忙しければ忙しいほどに評価を得られていると感じていました。これまで1日のほとんどを店で過ごしていたけど、家族との時間を設けることもまた、自分にとって想像していた以上必要な時間だったと感じています。
父親として、夫としての自分の価値は、自分自身が考えていたものよりも、ずっと高いものかもしれないなと。
職業人としての自分の価値と、家族から見た自分の価値との折り合いをつけていくためには、限られた時間を有効に使っていかなければなりませんね。
家族も仕事も、どちらも比較できないほど大切だと感じていますから、メリハリを持って、良いバランスを見つけたいです。
Q
コロナ収束後の世界はどうなっていくと思いますか?
「何を」するかよりも「なぜ」するかを考えることの重要性を突きつけられたのが、今回のパンデミックだったのではないでしょうか。
事業を行っている方は、継続させるのか、休業し耐え凌ぐのか、傷の浅いうちに撤退するのか、どれを選ぶにも強い意志が必要だったはずです。
僕自身、コロナ禍で頻繁に耳にした「不要不急」という言葉から、美容室、あるいは美容師という仕事の本質的な意味を、改めて考えることにつながりました。髪を整えることの価値や意味は何だろうかと。
これから先、感染リスクがある中で、社会の新たなスタンダードとなるものが出てくると思います。
ソーシャルディスタンス、手洗い、消毒はその一つになるでしょう。
人々はなるべく人混みを避けるようになるだろうし、「不要不急」をこれまで以上に判断していくようになると思います。リスクがある以上、考えざるを得ないですから。
しかしながら、経済的側面を考えても、教育的な側面を考えても、コロナとは今後上手く付き合って行くしかないと思います。そのためには多少スローダウンしてでも、対応していけるよう社会のあり方を変容させ、慎重にそしてゆっくりと進めて行くしかないかもしれません。
ウイルスとの共存は、感染のリスクを冒してでも利用する価値をはっきりと感じられる(感じさせる)ものと、利用する価値を感じないものとのコントラストが、より一層強くさせると思います。
新たなスタンダードが生まれてなお、人々を集め続けるため、支持を得続けるためには、これまで以上に求心力と柔軟性が求められるでしょう。もしかしたら、独善的なカリスマ性を備えた人よりも、優しさや思いやりを持った人がそれにあたるのかもしれません。
Q
ムードとしてヘアやファッションなどの人々の今の動き方、次のアクションはどんなものになると思いますか?
どんなモノになるのでしょうね。
周りの人がどうするかはわからないですけど、個人的には「現象的」「その場しのぎ的」なものではなく、「本質的」「末長く楽しめる」ものを提供していきたいと常々考えています。
お客さんが美容室に来る目的は、単に機能として「髪を整える」だけではありません。おしゃれをしたいきもちの奥には様々な理由があり、その理由の分だけ様々な価値があると思います。
美容室に置いて「髪を整える」は価値の中心ではありますが、それは提供する価値の一つに過ぎないのです。
情報を簡単に得られるようになったことで、消費する速度も速くなりました。
また、それを後押しするように、現象的なものが増えている気がします。そして消費スピード、数字的な部分にだけ焦点を当てた成長に、ついていけなくなっている人が増えているようにも思います。
急ぎすぎてるなと感じるんですよね。もっと自分軸で考えられるような余白が必要で、コロナ禍はそれらを強制的にスローダウンさせ、自分を見つめる大きな機会となったとも思います。
僕は器用な人間ではないので、全方位にとって良いものを提供できるように、意図的に余白を作り、焦らず考えて行動していきたい。
「サスティナブル」「多様性」「共創」などの社会をより良くしていこうとする考えや、意思を感じさせるヘアやファッションのあり方が流行やムーブメントとして単なる消費コンテンツとしてではなく、文化として根付いて行ったら良いなと思います。
Q
この状況(自粛/stayhome/人と直接会えない)みたいな中で何か今までと違うものは見えましたか?
「不要不急」と感じるものが、想像以上に多かったということに気付かされました。長時間の労働や、スピード重視の仕事、ハンコやファックス、購買行動、人間関係、外出など、色々と無駄と感じることは多かった。
しかし、「不要不急」「ムダ」の中で、確実に自分の人生を豊かにしてくれていたものでもあり、人生が面白くなっているともいえるなとも感じました。合理性だけでは生きていけないやって。
Q
ソーシャルディスタンス / オンライン通話 など物理的に会ったりできなくなったことでの精神的な距離感を感じますか?
会いたいなと強く感じた人に対しては愛おしさは大きくなりましたね。
多分コロナ前に比べて、自分に素直で正直になったと思うし、危機的な状況なのに優しさが増した気がします。笑
それはきっと、想像以上に多くの友人やお客さんが応援してくれていることに気がつけたからかもしれません。
ありがたいです。
Q
インターネットで見つけられるものでオススメのものはありますか ?
ミヒャエルエンデの「モモ」「果てしない物語」
Q
最近何か買いましたか?
JIL SANDERのオーガニックコットンTシャツセット
あとハムスター2匹
Q
美味しいテイクアウト / デリバリーなどあれば教えてください。
代々木上原にあるフレンチレストランsioのバインミー・お弁当。
Q
今、どんなサービスがあったらいいと思いますか?
この問いの答えを常に探しています。 らふるでは、このコロナ禍に自店で利用可能な「ギフトカード」の販売を開始しました。 贈り物とは本来、購入者が他の誰かの笑顔が見たくて選択するモノ。「贈り物=笑顔を繋ぐ」とも言い換えられます。 美容室での体験を贈るという発想は、これまであまり見かけませんでした。きっかけはお客様からの「らふるの体験をプレゼントにしたい。」とのお声から。 物質的なものに限らず、笑顔が見られる可能性があるのであれば、体験を贈り物としてご用意する事があっても良い。 購入してくれた方の意識の中には、その企業を応援する気持ちと、笑顔を生む力があると信じている気持ちがあり、機会を託してくれているとも言い換えることができます。 我々サービスを提供している側の技術や、人間力を高めることにもつながります。大前提として、高いクオリティの技術、ホスピタリティを提供できていなくてはなりませんから。これがなかなか難しいのですが。 このギフトは一例ですが、究極は、「未来永劫、全人類が幸せでいられる社会の仕組み」 いちサービスや誰か1人の頑張りだけでの実現は難しいですが、自発的に学び、行動し、少しずつでも仲間を増やしていきたいです。
Q
今何か告知することやメッセージなどあればお願いします。
美容室らふるをよろしくお願いいたします。