世の中の価値観が変わってきていることを実感する毎日だ。次から次に様々なことが巻き起こって心がずっとざわざわしている。何を信じていいのかもうわからなくなってしまった。私は今誰かと直接会って話したい、同じ空間で同じ温度で同じ匂いをかぎたい。あなたに逢いたい。
A.N.D.は、今起きている出来事や思想を一過性ではなく継続的に向き合い、日々変わる状況によって変容する意識や意見をリアルタイムに追っていきたい。その手段の一つがこのA.N.D.NOWであると思っている。日々モノを作ったり遊んだりしている人々に今どんな生活をしていて家で何を考え何を見ているのか。日本はどうなっていくと考えているか、問いかけてみる。芸能人やニュースキャスターや専門家じゃなくって少し距離の近い、みんなの今。人間は慣れるしいとも簡単に忘れてしまう。これから先の不安定な、だけど必ず来る未来の為に。覚えておきたいことがたくさんあります。些細なことでもいい、誰かの一言がまた別の誰かにとって、意識の確認やこれからの未来を行きていく上での支えや発見になりますように。
A.N.D.NOW#21、TOUCHU。一軒家の木のパネルを街で見たことがある人は多くいると思う。彼らは木や植物を使い作品を制作しているアートユニット。なかなか知られていない彼らの生活を覗いてみようと思った。
Photo by myu
Q
お名前と、肩書きなど教えてください。
TOUCHUの小林と鈴木です。
(以降、小林=K /鈴木=S)
Q
生活はコロナ前と変化しましたか? 現在の生活について教えてください。
K)
TOUCHUの他にアパレル関係の仕事をしています。
そちらでは緊急事態宣言中はリモートワークになり、対面でのやりとりが減りました。
解除後も対面での打ち合わせは減りテレカンやメールでのやり取りが増えたことが1番の変化です。
プライベートでは以前に増してフィルムカメラで写真を撮るという機会が増えました。作品とかそういう訳ではなく娯楽として。現像が上がってくるまで分からない楽しさ、不便さがとても有意義に感じて。
昔コンビニの前にあったガチャガチャとかが好きだったのですがそれの感覚に近いかもしれません。
現像が上がってきて良い写真があると、ガチャガチャでいうレアキャラやキラカードが出た。みたいな感じですかね。
S)
以前は旅をすることが多く、それが生活の一部にもなっていたので、どこか遠くに行けない事が自分にとっての一番大きな変化です。
最近の生活ですが、コロナ直前に台湾に行った際に出会った「豆花」という食べ物に魅力され、家で作ったりしています。
再現するのがなかなか難しくて、豆乳と寒天の分量を日々試行錯誤しています。
今後この様な、旅で知り得た楽しみを生活に落とし込む事の循環が途絶えてしまうのは残念ですね。
あと、ちょうどこのコロナの時期に引越しをした事もあり、環境に変化が生まれ、
今までの生活では触れていなかったモノ・コトに触れる事が増えて来たかと思います。
仕事(旅行関係)での働き方も在宅勤務が取り入れられるなど以前とは変わって来ましたね。
その中で色々と気付いたことがあり、それを今後どう生活に反映させていくか考え中です。
Q
ソーシャルディスタンス / オンライン通話 など物理的に会ったりできなくなったことでの精神的な距離感を感じますか?それは余計に
K)
必要以上のコミュニケーションを取らなくて良くなった分、効率的に物事が進むので楽になったと感じることが多いです。
その反面、たわいも無い会話から新しいアイディアが生まれる機会が減ったとも感じます。
S)
同じ空間にいるからこそ生まれるモノがあるし、始まるコトがありますよね。
対面する中で偶発的に湧き出てくる事は面白いしパワーがある。
緊急事態宣言下にTOUCHUで発表したSTAY HOMEマグカップの写真です。自分たちのロゴがちょうど家(HOME)なので言葉遊びのグラフィックを作成して家でゆっくり出来るようにマグカップという形で発表しました。
Q
ジャンル問わず「アーティストやその周り」の人々の今の動き方、次のアクションはどんなものになると思いますか?
S)
WEB上での発信という流れが、加速しより大きくなっているとは感じるものの、
それに対しての反動的な動きが生まれてくると思うし、それを仕掛けたいとも思います。
K)
なんとなくの感覚ですが、リアルな現場で人と会う機会が減る分、違う繋がりを求めたりする傾向もあるかなと思います。
なので有名無名問わずでコラボレーションなど誰かと誰かが組んで表現することも増えるのではないかと思ってます。
Q
「自由に外に出て人に会うことができない状況」になった時にご自身の活動の意味は変わりましたか?
K)
今までは自己完結していたものを、外に発信したいと思うようになりました。
より顔の見える人たちに向けた物作りをしたいと感じます。
S)
私は自分自身に向いた(自分の生活を楽しくする・気持ち良くする)活動が増えた気がします。
今まで外に出て人に会って何かをしていた時間が減った分、その時間がそれに向けられたのかと。
月面自然小區- moon side biotope - (2019.4)
TOUCHU YUKIKO YAMASAKI AITONE GNECK の4アーティストでの合同展の写真
"Them;"LAID BUG 1st ANIV. (2019.11) の会場内のデコレーションを担当した際の写真。
ドライフラワーや植物に蛍光塗料を吹き掛けブラックライトで発光させています。
植物本来の色ではない発色を与えることで今までにない植物の表現方法を模索しました。
Q
今までと違うものは見えましたか?ポジティブなものも、ネガティブなもの含め。
S)
引っ越した先が公園の近くということもあり、
川を眺めたり夕陽を見たりなど、自然なものに目がいくようになりました。
その反動という訳ではないですが、メディアに触れる時間・機会が大きく減ったかと思います。
K)
アウトプットすることの必要性と大切さがより見えました。
Q
今後、ご自身の活動は変わっていくと思いますか?
K)
よりスピードを上げて外に向け発信していくべきだと思います。
今までは完成度を求めて出しあぐねていた表現方法だったり制作物をもう少し肩の力を抜いて放り投げてみる。みたいな感覚。
自分はやっぱり物作りが好きなので雑談するみたいな感覚で試しにふと転がしてみる活動が色々な枝葉見たいな感じで沢山あったら人生飽きないかなと 笑
S)
色々な状況に合わせて、そのタイミングだからこそ出来ることを逃さないようにしたいですね。
植物の買い付けの際の写真。信州の農園に直接出向き、1つ1つ吟味し、市場に出回らないようなクセがあり味わい深い植物をチョイスしてきます。
Q
今の日本の状況をどうみていますか?
K)
大きく変化することはないと、みんなが思っているなと感じます。
でも経済状況は明らかに悪くなっていくので普通だと思っていてもだんだんジリ貧的に心が貧しくなる人も増えるだろうし治安が悪くなっていくなーとも。
S)
選挙にきちんと行こうと思うようになりました。
Q
今一番興味のあることはなんですか?
K)
生活を豊かにすること。
単にお金をかけるということではなくて安価なものでも高価なものでも大切だと思えるものを選んで使い続けていくこと。
S)
「明かり」ですね。
住環境における照明に対して色々とアプローチをして楽しんでいます。(自然光も含め)
焚火にハマっていることも「明かり」に対しての衝動の一つかと思います。
Q
インターネットで見つけられるものでオススメのものはありますか ?
K)
YOUTUBEの「Naokiman Show」 (笑)
以前飲みの席でSPICEPOSSEの山さんに教えてもらいダラダラと見続けています。
こうやって何かの情報を飲みながら共有することも減ったのは寂しいですね。
S)
YOUTUBEの「Cercle」
GIGのmyu君が教えてくれたのですが、世界中の素晴らしいロケーションでDJがPLAYしていて、踊りに行きたくなります。
Q
最近何か買いましたか?
S)
リビング用に照明(GLO-BALL/Jasper Morrison)を買いました。
家の中に天体があるようで気に入ってます。
あと花束。
K)
友人のアーティストAICONさんのシルクスクリーン作品、大きめのモンステラ(植物)を買いました。
モンステラは横に伸びすぎていて自立出来ないやつなので以前古物屋で購入した大正時代のボロボロの椅子に立てかける状態で自立させています。愛着しかないです。
それと絵を描く際に愛用しているステッドラーのシャーペンのオールブラックタイプ(925 35-05B)を近所の文房具屋さんで見つけたので0.5mm/0.3mmをそれぞれ購入しました。絵を描くときにモチベーションが上がりました。
先に話したフィルム写真です。購入したAICONさんの作品をなんとなく撮ったもの。
Q
コロナ収束後の世界はどうなっていくと思いますか?
(ご自身の活動含め、世の中の仕組みや、ライブハウス、クラブなどの存在など)
S)
新しい生活様式が新しい倫理として守らなければならないルールに加わって、
少し窮屈な感じが増す分、その反動が出てくると思います。
こういう時こそ面白いものが生まれる気がします。
K)
クラブなどのスペースに関しては、なんとなく行くというより、
ちゃんと好きなものや目的を持って集う人しかいかない場所になるのでは無いかと思います。
その分カルチャーとしての濃度は上がると思います。ただふらっと立ち寄って好きになるDJや音楽ジャンルみたいなきっかけ自体が減ってしまうかもしれませんね。
Q
今何か告知することやメッセージなどあればお願いします。
今年の夏に向けて、TOUCHUから花器ブランドを立ち上げる予定です。
気持ちよく日常を送るための1つの選択肢を用意しますので、楽しみにしていてください。
TOUCHU
東京、東中野に存在した一軒家から始まったプロジェクト。
一つ屋根のもとに人が集い、自然発生的に生まれる流れを原点に、プロダクト作成からペインティング・空間演出・植物などを手掛けている。